主催団体について

Kultur & Spielraum e.V.

元美術教師のゲルト・グリュナイスル(Gerd Grüneisl)さんらが中心となり、
ミュンヘン市を拠点に、子どもの遊び・遊び場づくりの実践的な活動を展開しています。
前身のNPO時代を含め、この分野で40年の実績があります。
ミニ・ミュンヘンは市の支援により当団体が主催しています。

主催団体代表 ゲルト・グリュナイスル氏からのメッセージです

「遊びの街、ミニ・ミュンヘン」は、形式にとらわれない学習の一例です。
子どもたちによって「ミニ・ミュンヘン」と名付けられたプロジェクトが誕生し、独特な形になった1979年よりももっと早くに、実は「遊びの街」の成功はありました。

「遊びの街」の歴史ははるか昔の19世紀末に、「児童の世紀」(エレン・ケイ)と称され、希望に満ちて新しい教育や学習の方法を実験する形で始まりました。若い先生たちと若い親たちは、変わっていく環境に直面し、新しい学習の場や学習の方法を共に求めていました。子どもが運動や活動、そして人間関係に関する要求を満たし、その中で好奇心を再発見し、さらに子どもの世界に入り込む要求を満たそうとする中で、もの、道具、メディアや情報が整っている「活動の場」や「遊びの環境」が誕生しました。創造的で、自己決定やファンタジーを促す学習の方法に積極的に貢献するこの場は、学習内容そのものだけでなく、子どもが将来にも適応できる自己表現や生活スタイルを開発できることの可能性を切り開くものでした。

すべての子どもや青年が自由にアクセスでき、道具が整っている公共の「遊びの景観」がこのアイデアから誕生し、そして「遊びの景観」のすべてのテーマは、子どもが日常生活で体験できるものになりました。この中で住宅やイマジネーションたっぷりの建物が、はじめて誕生しましたが、最初のものはダンボールで作られ、その後は木を使うこともありました。このプロジェクトはデザインをし、建物を実際に作る楽しみを生み出すだけではなく、「自分の居場所」を作り出す小さな冒険の場でした。

質素な、または想像力に富んだ窓、ドア、屋根、バルコニーや前庭を持つ建物がいくつか並び、または点在することによって、道路や広場が生まれ、そして街区も誕生しました。計画や意図的な指導がなくても、子どもは自然に発生したこの街で店を開き、古いじょうごとホースからできた電話機までもある郵便局を開き、草や花を調理する飲食店を開き、大人の世界でこそ体験できるような結婚式やお祭りを楽しむ家族を作りました。

決まった構造や教育的立場がなくても、日常世界の一部を再現し、体験することができる最初の「ミニ街」がごく自然に誕生しました。しかし構造と教育の基盤は、子どもではなく、大人特に教育者の役割です。教育者は「教えること」を通してではなく、子どもの要求と大人の世界の文化的標準の間にある緊張感を積極的に扱うことを通して、新しい共通の体験世界を切り開いていきます。この教育方法はまさに啓蒙時代の教育論です。

「自然と人間とものが私たちを教育する・・・。自然は私たちの才能とエネルギーを引き出す。人間は私たちに才能とエネルギーの使い方を教える。ものは私たちがものを使い、ものを見る体験を通して私たちを教育する。」(ジャン=ジャック・ルソー、「エミール」、1762年)。

特にこの最後のパラダイムがミニ・ミュンヘンの重要なモチーフとなりました。子どもの遊びの街が人生の学校となり、遊びを通して子どもの育つ世界がイマジネーションに富んだ新しい世界になります。しかし子どもの世界と大人の世界は全く異なるものではありません。むしろ、子どもの世界と大人の世界の間の架け橋がこの教育方法の典型であり、それが学ぶことと知ることと同時に、魅力と楽しみを与えてくれます。

遊びの街の教育理論は、子どもの遊びの実践観察に基づきます。子どもの遊びは自由で目的なしに行われると勘違いすることが多いですが、子どもは実は遊びながら、その体験を気軽にそして意識的に変容させながら、自分の実際の体験を方向づけていきます。

できるだけ多くの子どもたちがいっしょに遊びに参加できるように、そして参加したすべての子どもたちが自分の遊びの場を作ることができるように、街の遊びの構造と簡単なルールを作ることだけが、最終的な大人の教育者の役割です。

教育や新しい教育コンセプトを巡る議論の中で、このような自由な学習をどのように学校の中や周辺で成立できるか、さらにこの学習がどのように学校の形式的かつ行政的な教育方法を補い、または充実させることに貢献できるかどうかは、大きな課題です。子どもの多様性とその学習方法の多様性に対する大人の理解が、この教育コンセプトの前提にあります。複雑に形成された学習の場で子供の好奇心と「知りたい」気持ちを保ち、この気持ちを発展させることが教育者の役割であることに関する理解も必要です。学習環境の興味や魅力は、学校建築のデザインから生まれるものではなく、むしろ「本当の世界」との関わりの中から生じるものです。

最後に、「ミニ・ミュンヘン」のような遊びの街が、ドイツと異なる文化状況の日本においても開催されて豊かな成果を上げることを祈り、また今後の有益の意見交換を楽しみにしています。

「Kultur & Spielraum e.V.(NPO文化と遊び空間)」代表 ゲルト・グリュナイスル/美術教師