ミニ・ミュンヘンを支える大人たち 主催者について

なぜ、これだけのダイナミックなイベントが実現し、ずっと続いてきたのか、誰もが関心を抱くことだと思います。そこで、主催者団体の中心メンバーに、どんな理念や思いで長年続けてきたのか、お話しを伺いました。

Gerd Grüneisl 氏へのインタビュー

ミニ・ミュンヘンで大事にしていること

ミニ・ミュンヘンで大事にしていること 私たちのしていることは全て「教育的な活動」です。大学時代はArtを専攻していたこともあり、美しいものとは何なのか、人を感動させるものは何なのかなど、Artを通して教育的なことを伝えたい。
でも、それは学校とは違った教え方であり、つまり「子どもと協力すること」が大事で、全てに通じるテーマになっています。ミニ・ミュンヘンはArtです。子どもと大人が一緒に新しいことをつくっている、このプロセスがArtなのです。
子どもの要求に答えられない場合もありますが、ここで重要なのは、「できなかった理由を説明する」ことです。
建設現場では工具を使用する場合がありますが、使えるか使えないかは子ども次第。7歳の子どもでも問題なく使えることもあります。使うかどうかは子どもと話して決めます。重要なのは「信頼」であり、安全ではありません。安全中心でやっていたら、学校と同じで、何もできません。 ミニ・ミュンヘンで大事にしていること

スタッフについて

スタッフについて スタッフはコアメンバー11人(NPOスタッフ)と、大学生、専門家(大工、放送、警察等)、16-18歳の青年ボランティアなど、総勢100名程度(その年により異なる)からなり、全員有償です。始めた当初は無償のスタッフもいましたが、責任感がなくなるので有償にしています。
「あまり口出ししない、手伝わない」ということをスタッフは認識しています。口出ししすぎると学校と同じになってしまいます。仕事の最終的な目標を子どもに伝えますが、そのプロセスは自由で良いのです。
その他のルールは特にありませんが、何か問題があれば、開催期間中、毎週火曜日の夜にスタッフ全員参加のミーティングがあるので、その時に皆で話し合います。

Margit Maschek 氏へのインタビュー

ミニ・ミュンヘンの「3つのルール」

ミニ・ミュンヘンには開始当初から変わらない3つのルールがあります。
① このまちに入るには市民権(パスポート)が必要である。
② このまちの仕組みは子供たちの代表が決める
③ 働くことと勉強すること両方でお金がもらえる(勉強すること=社会的なこと)。
この他にも細かいルールがあり、毎回変更していますが、この3つは変わっていません。 ミニ・ミュンヘンの「3つのルール」

子どもの「公共空間」

ミニ・ミュンヘンは、子どもの「公共空間」、つまり、こどもが自由に振る舞い、オープンにできる空間であることが重要ですが、両親たちの状況の変化によって、それが変わりつつあります。スタッフはそれを守るために戦っています。今の社会には、子どもの「公共空間」がないので、ここで実現しています。
親たちが要望する安全・安心の考え方がスタート時と今では変わってきました。今は、子どもは親のコントロールの元で遊んでいるので、新しいイベントをやっても子どもがなかなか集まりません。また、親たちからスタッフが少なすぎると言われることもあります。

子どもの「公共空間」 私たちは全ての子どもたちがミニ・ミュンヘンに入れるようにしたい。だから、なるべくコントロールしたくないし、お金もとりません。ところが、親たちはお金を払わないため、逆に心配しています。無料のイベントだからスタッフが少ないし、スタッフも働かないのではないかと。お金を払えばクレームをつけることができるし、本当に安全なのかと要求することもできます。
ここで重要なのが「公共空間の質」です。スタッフを増やすとか、子どもたちをコントロールすれば良いものではありません。このような親たちの要望はよくありますが、ポイントは、安全・安心は「両親と子どもの信頼関係の問題」であるということです。ミニ・ミュンヘンのスタッフの問題ではありません。ミニ・ミュンヘンは遊ぶ場所を提供するだけです。 ※ドイツ語における「公共空間(öffentliches Raum)」は、工学の分野では物理的な場所や空間を意味し、社会科学の分野ではソフトな社会的空間として使用しています。 子どもの「公共空間」

「柔軟性」が遊びをおもしろくする

「柔軟性」が遊びをおもしろくする ミニ・ミュンヘンには様々な子どもたちが参加しています。遊びのシステムが簡単すぎると物足りない子どもも出てくるので、オプションが必要です。オプションがないと、同じ遊びをするはめになり、つまらなくなってしまいます。基本の仕組みはシンプルでも、フレキシブルで複雑である必要があります
日本の子どものまちは期間が短いので、どうしても固い仕組みになってしまいます。フレキシブルにするには、時間が必要です。
また、ミニ・ミュンヘンはスタート時、1000人の子どもと50人の大人スタッフで始めました。人数希望も重要で、少なすぎるとミニ・ミュンヘンの遊びは機能しません「柔軟性」が遊びをおもしろくする

ミニ・ミュンヘンの近年の変化

ミニ・ミュンヘンの近年の変化 ミニ・ミュンヘンは、かつて、貧しい家庭の子どもたちの夏休みの過ごし場所として利用されていた面もありましたが、今は逆に貧しいと遊びに来ません。ミニ・ミュンヘンの教育的価値が親たちに評価され、主に余裕のある家庭の子どもが遊びにきています。この背景には移民の増加があります。移民は貧しい家庭が多く、また、特定の地域を出たがりません。これはドイツの社会問題であり、私たちは彼らも含めたミニ・ミュンヘンをやりたいと思っています。

2010年 & 2012年、ミニ・ミュンヘン会場にてインタビュー
取材:松本和世、協力:Dr.Lukas Kurtz / Ms. Nozomi Kurtz
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